メキシコ:五穀豊穣を願う「フライングインディアン」

メキシコの世界無形文化遺産「フライングインディアン」

フライングインディアンとは、メキシコのパパントラで不定期開催されている「ダンサ・デ・ロス・ボラドーレス」というお祭りのことです。
先住民族で受け継がれているものとされ、世界無形文化遺産にも指定されています。

このお祭りの特徴として、高さ35mほどもあるポールが立てられており、ボラドールと呼ばれるインディアンの男性5人がその上まで上って太鼓や笛の演奏で踊ります。
そして演奏担当以外の4人が、ロープ1本のみで逆さまになって地上へ舞い降りるというのが一連の儀式です。
ポールの太さは直径50cmほどしかなく、その上に四角いお立ち台程度の枠が設置されています。
命綱となるロープを足とポールに結びつけ、少しずつロープを伸ばしながら遠心力を使ってポールの周りぐるぐると、豪快に大きく円を描いて頭を下にして下りてくる様は、人間空中ブランコのようです。

五穀豊穣を祈るための宗教儀式

インディアンたちが高い場所からロープ1本で地面に降りてくることからフライングインディアンと呼ばれるようになったことが名前の由来とされています。
フライングインディアンは、メキシコを含む中央アメリカの一部に伝承される五穀豊穣をお祈りするための宗教儀式です。
スペイン統治時代に消滅しかけましたが、メキシコのパパントラ・デ・オラルテにおいて、トトナカ族が大切に守り継いできたものです。

ポールとロープ、そして人間だけで行うとても原始的でスリリングなパフォーマンスは、もともと神に祈りを捧げる儀式ではありますが、近年では国立人類博物館やトゥルム遺跡といった観光地を中心に行う、観光客向けのショーとしての意味合いが大きいようです。
ですがトトナカ族が受け継いだパパントラで行われる儀式は、古来の姿を残したままのスタイルだと言われています。
本来はポールを立てるところからが始まりですが、ポールはすでに設置された状態から行われ、上って下りてだいたい30分ほどとなります。

フライングインディアンの歴史

フライングインディアンの起源は、メキシコ中部に住む先住民族のナワ族、オトミ族、和ステカ族にあるという説がありますが、儀式自体は古よりメキシコ全土にあったとされています。
干ばつの際に神に雨乞いをする儀式でしたが、時代とともにその意味を変え、成人の儀式だったり、豊作を祈るためのお祭りでも行われてきています。

スペイン統治時代に抑圧を受け、儀式を行う機会が失われて以降、パパントラでは古来のスタイルを残していることから、フライングインディアン=パパントラと言われるほどです。
不定期開催ではありますが、メキシコ観光の際にぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。