イスラム教:ラマダーン

「第九の月」

世界の三大宗教の一つに挙げられているイスラム教ですが、そのイスラム教と聞いて一番に思い浮かべられる言葉が、「ラマダーン」の一言でしょう。
イスラム教以外の人は、この「ラマダーン」と聞くと、断食を連想されると思いますが、実はそれは間違いの様です。

ラマダーンとは、正しくはイスラム教の暦であるヒジュラ暦の「第九の月」を意味しています。
イスラム教は一般的な太陽暦とは違った独自の暦を使っていて、この暦は月の満ち欠けを基に計算された物で、一か月が29~30日となり、一年間では太陽暦より約11日短くなります。

ラマダーンの起源の一説としては、西暦624年に預言者ムハンマドが信者と共に、現在の聖地のメッカの行商の隊列を襲撃し、その反撃に来たメッカの部隊を返り討ちにした事を記念して、始められたと言われています。
現在ではこの「第九の月」に行なわれる断食の習慣を、指す事が多いですね。

ラマダーンの期間

太陽暦よりも一年が11日短く、閏月を設定していない為に、毎年ラマダーンを行う時期が違って来ます。
33年で季節が一巡するので、「ムスリムは、人生で同じ季節のラマダーンを、二度経験する」と言われています。

ラマダーンの月には、イスラム教の長老達が新月を観測すると断食が開始されますので、雲が出て新月を確認出来なければ、一日ずれてしまいます。
夏に太陽が沈まない極北地方では、直近の隣国の、日の出日の入り時間に合わせて行ないます。
新月の観測によって開始される断食なので、国や地方によって開始日が異なるのです。

第九の月に行なう断食行事ですが、24時間全く飲食を絶つのでは無く、日の出から日の入りまでで、行います。
夜間から未明にかけて一日分の食事を取るので、太ってしまう人もいるそうです。

イスラム教の神聖な行事の断食も、必ずしも第九の月に行わないといけない訳ではなく、W杯やオリンピック等の国際大会に出場する選手などは、試合中の水分補給は必須ですから、時期をずらして断食を行ったりしています。

断食する意味

この断食の習慣は、イスラム教の経典であるコーランにはっきりと明記されており、飲食は勿論の事、喫煙や性交渉なども禁止されています。
イスラム教では「六信五行」と呼ばれる六つの信仰と五つの行ないがあり、六信とはアッラー・天使・敬典・預言者・来世・予定を指し、五行とは信仰告白・礼拝・喜捨・断食・巡礼を指します。
この五行の一つの断食を行う行為の理由は、神の恵みに感謝する為と言われていて、ラマダーンが明けるとお祭り騒ぎで賑わいます。
全世界のイスラム教徒が共通して行う行事の一つの断食行為なので、同じ試練を共有する事から、ラマダーンの月はある種の神聖さを持つ時期と見られています。